2025年10月1日、米国では連邦政府の一部機能が停止するシャットダウン(政府閉鎖)が開始されました。これは、議会で政府運営予算案が成立しなかったためです。この閉鎖は米国経済や株式市場にどう影響を及ぼすのか、現時点での情報や過去の傾向をもとに整理してみます。

政府閉鎖とは何か?(まず押さえておきたい仕組み)
- 連邦政府予算が承認されなければ、多くの政府機関が資金不足に陥り、業務の一部が停止されます。
- 必要不可欠とみなされる業務は継続されるものの、監督機関(証券取引委員会 SEC、先物市場を監視する CFTC など)やデータ公開などが影響を受ける可能性があります。
- 経済統計データの発表が遅れる、許認可業務が停滞する、公共サービスが制限されるなど、波及効果が出るのが特徴です。
- ただし、過去の事例を見ると、短期的なシャットダウンは市場に致命的なダメージを与えることは少ないとの分析もあります。
市場・株式への主な影響ポイント
1. 規制監督機関の機能低下による不透明性の上昇
SEC(証券取引委員会)は90%以上の職員に休業命令を出したとの報道もあります。これにより、新規上場(IPO)の審査遅延、ETF承認の停滞、マーケット監視体制の弱体化が懸念されています。
また、経済統計(雇用統計・物価指数など)が遅延または中断されることで、市場参加者の判断材料が減少し、情報のない「見えない相場」になりやすくなります。
2. 金融政策の迷いと金利予想への影響
中央銀行(FRB)は通常、経済データを材料に利下げ・利上げを判断しますが、データが途切れると意思決定が難しくなります。
そのため、マーケットは「利下げ期待」を先行して織り込む傾向が出ており、短期金利・長期利回りの動きが株価の浮揚・沈下に直結しやすくなります。
3. 安全資産への資金流入・リスクオフ圧力
閉鎖リスクが長引くと、投資家は株式よりも債券・金(ゴールド)等の安全資産に資金を振る傾向が強まります。実際、金価格はシャットダウン報道を背景に上昇しており、債券利回りも低下傾向がみられています。
特に、米国債(長期債)が利下げ期待の下で魅力を増す局面が出てくる可能性があります。
4. 信用リスク・国債格付け低下の懸念
政府運営の混乱が長期化すると、米国の信用格付けに対する懸念が高まります。最近、格付け機関Scopeは今回のシャットダウンが信用スコアにマイナス影響を与える可能性があると警鐘を鳴らしました。
格付け低下が実際に起きると、国債利回りが上昇、借入コストが上がるため、企業の投資コストも増加し、株式にとってネガティブ圧力になります。
過去事例と比較:歴史に学ぶ
- 過去20件以上のアメリカの政府閉鎖では、株価には顕著な下落トレンドは出にくい傾向があります。実際、S&P 500 は過去の閉鎖期間中、むしろ上昇したケースもありました。

- ただし、今回のシャットダウンは「格付けダウングレード」「金利・為替の逆風」など複数リスクが重なっており、過去と同じような動きになるとは限りません。
投資家としての立ち回り — 私見と戦略
- ポジションを軽めに持つこと
特にリスクの高い銘柄(グロース株・ハイレバレッジ株)は一時的に比率を抑えても良いでしょう。 - 債券比率・キャッシュ比率を高めておく
予想外のリスクに備える意味で、防御的な比率配分は有効。 - 情報の鮮度にこだわらない
データ停止が予想される中で、過信させる指標や予想に頼らず、複数観点から判断することが重要。 - 信用格付け・長期金利の動きを注視
格下げ懸念・国債利回りの変動は市場全体に波及しやすいため、金融ニュースに敏感でいるべき。
まとめ
米連邦政府の一部閉鎖は、ただの政治ショーではなく、経済・金融市場にも実質的な影響を持ちうるイベントです。
ただし歴史から見ると、短期間の閉鎖は大きなトレンドを変えるほどには作用しにくい傾向があります。
ポイントは、「不確実性に備える姿勢」を持ちつつ、過度な反応をせず、長期視点での資産運用を軸に据えること。閉鎖が解消されれば、市場は持ち直す可能性も高いです。


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