
株式市場でリスクを取る際、季節性+マクロ経済の流れをしっかり見極めることが大切です。私は、2025年9〜10月は相場が厳しいものになると予想し、それを見越してポートフォリオではキャッシュ比率と米国債のウエートを高めに構えています。以下、その理由と最近の市場データを整理しながら、「利下げ=買い」の神話を検証します。
最近の米国市場のデータ・状況
まずは現状を俯瞰しておきましょう。
| 指標 | 値/状況 | 意味合い(注意点) |
| S&P 500 | 約 6,584.29 ポイント | 年初来で順調な上昇をしてきており、かなり高値圏。過熱感も指摘され始めている。 |
| Dow Jones | 約 45,800~46,000‐付近 | こちらも高値更新。リスク許容度が高い市場参加者の余力が試されている局面。 |
| Nasdaq Composite | 約 22,140‐前後 | ハイテク・成長株が牽引役。だがバリュエーションの膨らみの警鐘も多数。 |
| 10年国債利回り | 約 4.07% | 利回りは高め水準。米国債の魅力が比較的上がっており、債券投資を選択する余地あり。 |
その他、インフレ率は徐々に抑制傾向を見せてきてはいるものの、2〜3%レンジで落ち着いておらず、労働市場の強さや賃金上昇、コストプッシュ要因(輸入コスト、エネルギー、材料費など)の影響が残っています。
また、利下げ期待が市場を押し上げ要因となっているとの見方も多く、いくつかのデータで「利下げがそろそろ始まるかもしれない」という織り込みが進んでいます。
9-10月に警戒すべき理由
この時期を厳しいものと見ている理由は複数あります:
- リセッション入りの可能性
経済成長が鈍化し始めており、雇用、消費、企業収益など複数の先行指標で弱さが出てきている。利上げが抑制的であった期間が長く、インフレ抑制の余波で信用コスト・金利負荷が企業収益を圧迫する可能性がある。 - 利下げ織り込みとそのギャップ
市場では連邦準備制度(Fed)の利下げが期待されているが、実際に利下げが行われるのは「景気悪化」が確認された後、かつインフレが十分抑えられてから。利下げ期待そのものが楽観ムードを生み、過大評価を誘う恐れ。 - 季節性と投資家センチメントの悪化
9月10月は歴史的にも調整やボラティリティが強まることが多い月。夏の終わり、予算期末、企業決算発表シーズンなどが重なり不透明感が増す。 - 債券利回り・債券の魅力上昇
利回りの高い米国債が存在するため、株式のリスクを取るよりも債券で安全に利を取る選択が合理的な局面である。特に短期間での下落リスクを抑えたい場合。
利下げ=「買い」ではない、という立場の根拠
あなたが指摘する「利下げ入りつつあるプロセスでの利下げは買い材ではない」という見方には、以下のような根拠があります。
- 利下げの先には「経済の痛み」がある。景気後退が始まってから利下げが始まることが一般的で、利下げはむしろ市場の不安を表すシグナルであることが多い。
- 利下げ発表時には「織り込み済み」の期待が大きいため、発表そのものがサプライズにならず、かえって「売り」が出ることもある(sell-the-news のパターン)。
- 利下げが行われても、企業収益や消費が冷え込んでいたら、それを補うだけの弾力がマーケットにを与えるかは別問題。
このような理由から、利下げ期待をベースに積極的なロングポジションを取るのではなく、むしろ下振れリスクを最小限に抑えるポジション構築を優先すべきだと考えています。
私の戦略:キャッシュ&米国債の重視
このような環境を想定し、私のポートフォリオ戦略は以下のようになっています:
- キャッシュ比率を高める
余力を確保することで、相場の悪化時に焦らず動けるようにする。株式・その他リスク資産のドローダウンを抑える保険として。 - 米国債のウエートを上げる
10年債を中心に、利回り4%前後が取れる債券があり、かつ信用リスクが低いため、価格変動のリスクを一定取った上で安全資産と見なせる。金利先行きの見通しが高いため、債券の価値が維持されやすい。 - 株式は慎重にセクター・銘柄を選ぶ
ハイテクや成長株は評価が高すぎるリスクあり。ディフェンシブ系やキャッシュフローが安定していて負債が少ない企業、あるいは配当利回りのあるものを重視する。 - ヘッジ手段を保持
インバースETFやプット・オプションでの下振れリスクの限定、あるいはコモディティ(例:金など)の保有も検討。
予想シナリオと今後の見通し
次のようなシナリオを想定しています:
- 緩やかなリセッション入り
2025年末〜2026年始にかけて成長率が0%付近、またはマイナス成長の四半期が発生。失業率がやや上昇。企業投資や消費が失速。 - 利下げは徐々に
Fedはインフレ抑制が確認できない限り利下げ幅・速度を抑制。市場は「より早く」「より大きく」という期待を持っているが、Fedのコミュニケーション次第でサプライズを伴う調整あり。 - 株価は調整局面へ移行
今の高値圏の多くで利益確定売りが入りやすく、特に過度に期待のかかった成長株・AI関連銘柄は巻き戻しがあるかもしれない。
結論
9〜10月は、株式市場にとって「慎重期」。利下げの気配があるとはいえ、それがそのまま“買い”の合図になるわけではありません。むしろリスク管理を重視し、不確実性に備えることが肝要。


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